貫汪館 横浜支部稽古(県立武道館)2/2

じっと正座をしていても、汗は引くどころか、顔から袴の上にボタボタと落ち続けます。

 

立ち上がり、棒を持って廻します。棒の重さを感じます。
棒が動きたいように動かし、ただただ棒の邪魔をしないように努めます。
前進後退、足の踏み換え、片手で廻し、転進して逆廻し。
少しでも我が出ると、回転が乱れて、棒が袴のすそや上腕にびしびしと当たります。
邪念の出ないよう、まっすぐきれいに廻したい。というのも我欲邪念でしょうか。
腰を低くしよう、重心を落とそうなどと思うと、股関節が固まり、大腿部が緊張して、膝の上がすぐに痛くなり、長時間その体勢を保つことができません。
さらにその反動として肩が上がり、腕に力が入り、腕で棒を廻すようになります。
もちろん動きはぎこちないものになります。
そうではなく、そけい部をゆるめるように意識します。
結果として自然に腰が落ち、大腿部が緊張することもなく、長時間でもそのままの体勢でいられます。
大腿、膝、脛やふくらはぎに力感はなく、足の裏に重さを感じます。
体重をべったりと床に預けて動きます。

 

調子に乗って早く回していると、棒を落としてしまいました。
さいわい床に平行に落ちましたので、ばしゃーんとすごい音が一回しただけでした。棒の先端から落ちると、びっくりするくらい派手に跳ね回り、ものすごい音が何回もします。
体育館や武道館の床はそのくらいでは傷がついたりはしませんが、我が家の障子は穴だらけです。
ただ廻しているときにはなんの実感もないのですが、実際にこの勢いで顔面を突かれたらたまらないだろうななどと思います。
落として派手な音を立てた気恥ずかしさもあり、棒を廻すのは終わりにしました。

 

半棒表
十二本を通します。

そけい部をゆるめ、小手先ではなく体重を乗せて打ち込みます。
左右逆の動きも考えずに動けるよう。考えない方が軽く動けるような気がします。

 

半棒裏
前回の稽古の後、思うところがありました。
裏なのについ表の動きが出てしまうのは、そもそも表の動きが正しくないのだろうと。
表のときには表の動きをして、裏のときには裏の動きをして。それでは稽古のための稽古です。
いつでも自由に動けるようになることが修行の眼目のはず。
表と見せかけて裏、裏と見せかけて表、というのですらなく。
表と裏の区別すらしてはいけない。そもそも表と裏は、単なる稽古の方便のはずです。
表と裏が同じ動きでなければいけない。そうでなければ変化はできない。
表と裏の共通の動きを探しました。ある一点までは同じ動き、そこから自由に変化する。
同じ業を表で動いたり、裏で動いたり。自由にできました。
これで打太刀を翻弄できたら、とても楽しそうです。
でも、それで翻弄されてしまうような打太刀の方では、稽古相手としてはちょっと困るかもしれません。

 

棒を置いて汗を拭きます。汗が止まりません。
ポカリスエットで水分補給。
糖分が多いので薄めて飲むといいとも聞きますが、私はそのままごくごくと。
運動中はポカリスエット、運動後はアクエリアスがいいなどとも聞きます。
風邪などのときには、アクエリアスの方が美味しく感じます。

 

無双神伝英信流の稽古に入ります。
今回は真剣ではなくて、模擬刀です。
本身の柄はいずれも革巻きなのですが、この模擬刀は糸巻きです。
革巻きが汗で滑るというのはよく聞きますが、私自身は経験したことがありません。
糸巻きは今回はつるつると滑りました。柄の形状や刀身のバランスも大きいかと思います。あるいは力みか。

 

大森流、英信流表、英信流奥の約40本を一息に抜きます。

さすがに暑さでバテそうです。再度、水分補給を兼ねて少し休憩します。

 

太刀打、詰合、大小詰、大小立詰を一人で稽古。

本来は相手がいて稽古するものを一人で稽古して少し間抜けかな、などと人の目を気にしたりもしますが、そもそも大森流や英信流も知らない人が見たら一人でなにをやっているのかというところです。
遣える体を作ることが目的の稽古で、人の目を気にし出したら終わりです。
人の目がないところで独り静かに稽古できるのは当たり前のことで、人の目があっても自然に普通に動きたいです。
そもそも誰も、こちらのことなど見てはいないのですし。

「独り慎め」という言葉があります。
稽古の仕方はもちろんですが、こころのありようもあらわしているのかななどと考えたりもします。

 

大石神影流は、試合口と陽之表のみの稽古としました。
こちらは、人の目を気にして、のことです。公の場では表まで。

 

予定より早く、稽古を切り上げることにしました。
模擬刀の手入れをします。模擬刀には樋が入っていますが、樋に白いかたまりがいくつも。
なにかと思って拭き取ると、塩でした。汗が固まったのでしょう。
暑いときの稽古では、棟の油がなくなって納刀がしづらくなることがあります。
今回の稽古では、左手虎口は常に汗でびしょびしょで逆にすべりすぎるくらいで。
こうなることを見越して、真剣ではなく模擬刀で稽古したのでした。見越し三術

 

夏場は30分も稽古をしていると、真剣にはうっすらと赤錆が生じてしまいます。
大森流の逆刀や、英信流表の引き倒しで刀身に左手を添えることを例に出すまでもなく、納刀のたびに左手の虎口で峰をこすります。
普段の手入れで油を引くように、汗を塗りつけているようなものです。
目で見てわからないときでも、布で拭うと布がわずかに茶色くなるのでわかります。
布が汚れなくなっても、普段とは違うわずかに引っ掛かる感触でわかることも。
汚れを拭き取って油を引くことを何度か繰り返すと、軽いものなら除去できます。
しかし一度深く入ってしまうと、研がない限りは取ることはできません。
未熟な私は、重くて長い真剣の助けを借りて、稽古をしたいところです。
ですが、その大事な刀に錆を生じさせたくはありません。

 

モップ掛けをして、着替えます。
袴を脱いで広げると、白くて丸いかたまりがいくつかありました。
顔から落ちた汗が乾いてできた塩のかたまりでした。

 

柔道場では、躰道と柔道と合気道が同時に稽古しているのを外から眺めながら、帰途に着きました。

 H25.8.13