お父さん剣士

師走となりました。

本来は旧暦ですが、例によって現在では新暦でも呼称されます。

師は本来は僧侶のことですが、先生の意味で使われていたりも。

我が師である貫汪館館長は、学校の先生でもありますが、

12月に限らず年中お忙しくしていらっしゃいます。


バスに乗ろうと並んでいると、先生!と声を掛けられました。

誰のこと?ときょろきょろしたのは昔のことで。

そう呼ばれるのもすっかり慣れてしまいました。いいのかどうか。

声を掛けてくださったのは、会員である男の子のお母さんでした。

ご挨拶。夕方またよろしくお願いします。

家族三人で半年に一度の歯科検診の帰りで、買い物して

トイレットペーパーやら何やら大量に持っていたのが

ちょっと恥ずかしかったですが。


さてさて、あっという間に夕方に。

小学校の門のカギを開けていると、男の子と女の子が走ってきました。

子供はなんで走るのが好きなのか。走るだけで楽しいようです。

見ているこっちも楽しくなってくるのがいいですね。

でも、一緒に走ろうとは思わないのが年齢でしょうか。

後ろからお母さん二人と、男の子のお父さんも。

今回、お父さんが体験希望とのことです。はい、よろこんで。

大東流を稽古されていたとのことで、帯はお持ちでした。足袋も。

道着と袴ももちろんお持ちですが、刺繍が入っているので遠慮されたとのことです。ご配慮ありがとうございます。

今回、女の子も中刀と鞘を購入されました。角帯もお二人とも用意されました。

こうして、少しずつ稽古道具をそろえていくのも楽しみの一つですね。

ただ、家が剣やら刀やらだらけになるのもどんなものかとも思いますが。。。

お父さんには大石神影流用の鞘木刀をお貸しします。


さあ、稽古開始。大石神影流から。

構え

真剣、上段、附け、下段、脇中段、脇上段、車、裏附け

お子さん二人はだいぶ慣れました。

お父さんも、初めてなのにとてもサマになっています。

ただ力みが見えるのは仕方がないですね。

まじめな性格でいらっしゃるようなので、なおさらでしょう。


素振り

呼吸に合わせて、ゆっくりゆっくり繰り返します。

体育館はかなり冷え込んできましたが、

素振りを繰り返していると体の芯からポカポカしてくるようだといいですね。



試合口五本

お子さん二人はすっかり堂に入ったものです。

今まで手順だけ稽古していただいていましたが、今回から気合も。

ホー、エー。

声が出せるか心配していた男の子も、立派な物です。

もちろん女の子も問題ありません。


お父さんも苦労されながらもなんとか五本。

請けて、張って、顔面を諸手突きするのが難しいようです。

昔の自分を思い出します。

ところが五本目一味。左に入り身しながら受け流して真っ向を斬ります。

と説明してからやっていただくと、いきなりできました。

さすがですね。

子供と大人の違い、初心者と経験者の違い、といったところでしょうか。

お相手を見ながら説明や稽古の仕方を変えています。


最後には帯刀から始めて、お互いの礼をして抜いて構え、

五本を通して最後は一歩大きく引いて納刀してお互いの礼まで。

演武形式でやってみました。気合あり。

いやいや、お子さん二人はほんの数回の稽古とは思えません。

お父さんも初めてなのにきちんとできました。すごいですね。

皆さんのやる気をとても感じます。ぜひとも見習わねば。


角帯を巻いていただきましたが、どうしても鞘が遊んでしまいます。

考えてみれば、剣術の稽古のときは鞘はなくてもよかったかも。

来週は鞘を外しましょう。居合のときは鞘ありで。


少し休憩。

子供の方が素直に動いてますよね。とお母さん。

いやいや、さすが。鋭い一言です。こういった女性の見る目はあなどれません。

下手な経験者より、よっぽど的を射ていたりします。

岡目八目というだけではないようです。

大人は大人で利点もありますが、苦労する点もあります。

でも、ないものねだりは意味がない。

それぞれ自分の立場でベストを尽くすしかありません。


大森流 初発刀

今までなんの説明もせず、ただ動作を見よう見まねで稽古していただいていました。

少しずつ、ここは斬る動作、相手がここに倒れて、なんて説明を加えていきます。

でも、お父さんには最初からあれこれと少し多めに説明を。

一般的に、子供はなんの疑問も持たずに素直に真似をして、

大人は納得しなければ動きにくいものです。あくまで一般論ですが。

どちらが良いということではなくて、それぞれ一長一短があることでしょう。

子供の頃にただ動作だけ習い覚えて、あとであれこれと自分なりの理屈をつけてしまえば、見当違いの動作、想定になってしまうかもしれません。

 

初発刀はとても難しい。とくに前半後半が対になっていて、左右とか混乱します。

ただ、空中で回転しながら抜いて斬れとか要求されているわけではなし。

要求されているのは、頭の体操、心のストレッチといったところでしょうか。

もしも凝り固まっていたら、柔らかく揉みほぐせるといいですね。

武道が上達するだけでなく、人生も豊かになるかもしれません。


お子さん二人が一番苦労しているのは、居合の礼法だったりします。

刀を右手に持ったり左手に持ったり、下げ緒を指に絡めたり。

うん、たしかに難しい。でも大人はすぐにできてしまいます。

空間把握能力の問題でしょうか。不思議ですね。


大石神影流40分、初発刀20分で、あっという間の1時間です。

お父さん、入会されるとのこと。

気に入っていただけたようで、私もうれしいです。

来週からよろしくお願いします。


来週も通常通りの稽古予定です。