お母さん剣士

横浜にも冬将軍は訪れているようです。

夏の間は汗をかいて錆を生じさせるのが厭で真剣を遣うのを控えていましたが、秋になってまた遣うようになりました。

めっきり寒くなった最近では、居合を抜いても汗をかくようなこともなく。

鞘を払った刀身からはひんやりと冷気さえ感じて、村雨か秋水かというところです。

------------------------------

さて、今回は、男の子のお母さんが稽古に参加されました。

お母さん剣士ですね。でもって、剣士一家。かっこいい。

帯はとりあえず柔道の帯。いずれ角帯をご用意ください。


いつもどおりお子さんに帯を結んで差し上げようとするとその前に、

お母さんお二人が結び方を覚えたいと。さすが、女性の気配りでしょうか。

ちょうどこちらからもお願いしようと思っていたところでした。

いろいろな結び方がありますが、とりあえずは貝の口で十分かと。


帯の結び方を調べようと思ったら、昔は図書館で着物の本を借りて来なければいけませんでした。厚くて大きくて重い本。

でも今はネット検索で、説明も写真も動画すらすぐに見つけることができます。

なんて便利な世の中でしょうか。

私が二十年ほど前に図書館で武道関係の古い本を読みあさっていた頃は、

秋水ってなんじゃ?とか思ったものでした。

当時は現在のようにインターネットは普及しておらず、Google先生もまだいらっしゃらなかったことと思います。

ただ今でも、村雨や秋水なんて単語はネット検索しても目的とは違うものばかりが表示されるようです。

------------------------------

ちびっ子剣士二人にマットを用意してもらって、五人で横に並んでモップ掛け。

お母さんはこちらから声を掛けるまでもなく、ご自分でモップを取りに来てくださいました。

自分で稽古する場所ですから、自分で掃除する。当たり前のことです。

でも中には、そんな当たり前のことすらできない人もいるものなのです。

こういった心掛けは、上達するには必要不可欠なことかと思います。

それが自然に備わっているというのは、それだけでありがたいことだと思います。


6時30分から稽古開始。

一番上座に男の子、次いで女の子、お父さん、お母さん。

年齢などは関係なく、入会した順番に並んでいただいています。

女性や子供を下に見たり、年齢や肩書でえばるような人は、貫汪館では上達は難しいことでしょう。また逆に、稽古年数や段位でえばるような人も、やはり貫汪館では上達は難しいかと思います。

先輩であれば後輩の面倒をみるべきですし、後輩は先輩に気を遣うべき。

そして稽古年数などには関係なく、年上は敬うべきです。

そういった当たり前のことが、当たり前にできること。

それが大事なのだと思います。

さいわい、そんなことをあらためて言うまでもなく、自然にできている方ばかりなのでとてもうれしく思っています。

------------------------------

大石神影流

構え

呼吸に乗せて。手先ではなく体全体で。肚を中心に動くこと。

突っ立たず、下半身を弛めて。半身になる。


素振り

吸いながら振りかぶり、吐きながら振り下ろす。まっすぐ中心を斬る。

ゆっくり正確に。同じスピードで動くこと。


いつもはその場で剣を上下させるだけですが、今回は応用の素振りも少し。

その場で振りかぶり、一歩出ながら斜め面に斬り込む。右と左と。

そう、試合口の打太刀の動きです。

簡単な動作に思えますが、初めてだと下まで斬り下ろしてしまったり、

刃が反対を向いてしまったり。おもしろいですね。

自分にとっては簡単に思える動作でも、初めての方には難しいのでしょう。

それはそうですよね。日常にはない動きです。

こちらもそれを見て、アハ体験なみの衝撃を感じています。とても新鮮。

自分の動きを細かく見直すとても良い機会になっています。


試合口五本

お子さん二人に大人二人。これはもう二人一組で稽古ですよね、うん。

仕太刀だけを稽古していれば楽なのでしょうが、それもなかなか。

打太刀の動きも覚えれば、お互いに稽古することができます。

それもあって、素振りのときに打太刀の動きも稽古してもらったのでした。

 

男の子に前に出てもらって、一本目と二本目のお手本をやってもらいました。

一本目は問題なく。

二本目も左右が逆なだけだから問題ないかと思いきや、あにはからんや。

お母さんはなんだかとっても複雑な請け方をしていました。うーん、面白い。

でも一応、決まりどおりに請けてください。個人的にはそれでも全然オッケーなのですが。

三本目四本目は女の子にお手本をやってもらって。

四本目は片手突きです。左手は腰に。

五本目はお父さんにお手本を。請け流しはピカ一です。言うことなし。

左足前で請け流し、右足後ろで斬ります。


お母さん、難しい難しいと言いながら、どれも二三回でできてしまいました。

先輩方に交じっての稽古で顔は自信なさげですが、初めてなのに大したものです。

皆は勝つ方だけ稽古してきましたが、お母さんは今回初めてなのに勝つ方と負ける方の両方をいきなり稽古です。2倍です。2倍。

それでもできてしまうのは、さすが今まで稽古を見学していたからだけのことはあるのかなと思いました。

木刀を握る手に力が入っているのは、初めてで緊張していたからでしょう。

慣れればだんだん力が抜けてくるかと思います。


大石神影流は今回は鞘なしで稽古をしました。

鞘が遊ぶこともなく稽古に集中できました。

------------------------------

大森流 初発刀

居合はやっぱり鞘ありで。


刀礼から。

難しいですが、言葉でも説明しながら、皆でゆっくりと歩調を合わせて。

大丈夫。毎週やっていれば、いずれ覚えます。あわてる必要はありません。

男の子の頭から湯気が出ているのが見えるようです。ぷしゅー。

よくがんばっています。


初発刀

お父さんは今回、居合刀をお持ちになりました。それを遣っていただきます。

二尺四寸程度のようですので、貫汪館の無双神伝英信流には短すぎます。

身長もおありなので、二尺八寸くらいはあった方がよさそう。

でも、その長さの居合刀はかなりお高いんですよねえ~。いずれそのうち。

先週は大石神影流の鞘木刀を普通に抜き納めされていました。

お母さんは定寸の鞘木刀で。


ちびっ子剣士二人もだいぶ慣れました。

お父さんも二回目とは思えません。

お母さん、初めてとは思えません。四人の中で一番上手だったかも?

動作は100点。直すところなし。納刀もピカ一でした。

非力な女性の方が上達が早い、というのをここでも見た気がしました。


初発刀だけを何度も何度も繰り返し、飽きずに稽古していただきました。

------------------------------

あっという間の1時間。

人数が増えてくると、稽古の仕方もいろいろと工夫しなければなりません。

稽古内容は剣術五本に居合一本だけ。

武道は初めての方ばかりですから、急いで先に進んでもきっと良いことはないでしょう。じっくりと基本を身に付けていただきたいと思っています。

新しい形を覚えるのも楽しいものですが、それよりも、上達するよろこびを感じてほしい。内面の変化に楽しみを見出してほしい。

そう思っています。


来週も通常通りの稽古予定です。

体育館は寒いですから、暖かい服装でお越しください。

ヒートテック、カイロおっけーです。

お待ちしています。